過去の裁判例(大日本印刷事件:1979年7月20日 最高裁判決/電電公社近畿電通局事件:1980年5月30 日最高裁判決)では、会社が新卒学生に対して内定を知らせ、誓約書等の書類を出してもらったり、勤務場所などの詳しい労働条件を示したりした時に成り立つものが採用内定で、「解約権を留保した労働契約」となっています。
労働契約が成り立った後は、会社の都合によって一方的にそれを解約することは解雇となります。これを受け、客観的で妥当な理由がなく、社会通念上適切でないと思われた時は、権利の濫用として無効になります。
会社の業績悪化で内定を取り消すことは、従業員の整理解雇と同級の解雇に当たります。整理解雇の4要素を全体的に勘案して、内定取り消しの妥当性を判断することとなります。
整理解雇の4要素
(1)手続きの妥当性:整理解雇の内容と必要性に関して納得してもらうための十分な協議と説明をすること
(2)人員整理の必要性:法人の存続と維持のために人員整理が必要となっていること。業務量・売り上げの減少の程度などから、客観的に適切の必要性が判断される
(3)人選の合理性:整理解雇の対象となる人を選択する時の基準が適切であること。年齢や再就職の可能性、貢献の度合いなどがある。労働組合員、女性、特定思想をもつ人たちを対象にすることは不可能。
(4)解雇回避の努力:整理解雇を決めるまで、希望退職の募集、役職者の手当を削減したり、残業を減らしたり、一時帰休、新規採用停止などの解雇回避のための努力があったかどうかが問われる
内定の取消がやむを得ないこととなった時は、所定の様式によって前もってハローワークや学校に通知し、本人に対しても誠意をもって事情の説明をすることが重要です。内定取り消しの事由に関する説明書の要求が有ったら、迅速に交付する必要があります。なお、就職先の確保に関して最大限の努力・補償も行わなければなりません。
内定取り消しが下記のどちらかに当たる時は、企業名が公表されます。
(1)やむを得ず事業活動を縮小されていると認められないのに、内定を取り消した企業
(2)2年以上継続して内定を取り消した企業
(3)下記のどちらかに当たる事実が明らかになった企業
*内定を取消して、対象者の就職支援をしない
*内定を取り消して、対象者に十分な説明・協議をしない
(4)同じ年度内に10名以上の人に内定を取り消した企業