在籍出向の形態で出向させた従業員の体調が崩れているようです。この場合、出向先に責任を問うことができるのでしょうか。

入社退社

出向は、出向させる側の従業員が出向先の命令・指揮をされて就労する形態のことで、その種類は「離籍出向」と「在籍出向」の2種類があります。在籍出向は、出向させる会社との雇用関係を惹き続けたまま出向先の命令を受けることで、離籍出向は出向させる会社との労働契約を解消して、出向先と新たな労働契約を締結することをいいます。
体調などを崩してしまった従業員は、その雇用関係によって責任関係も変わります。この事例では在籍出向の形をとっているため、責任関係は出向先ではなく、出向させた会社にありますが。実際に業務の命令などを出したのは出向先であるため、一次的には出向先が安全配慮義務を持っています。しかし、出向させた会社にも一定程度責任が問われ、過去の裁判例でも(大成建設事件―1974年3月25日:福島地裁)「「安全配慮義務は、まず労働に関する指揮命令権の現実の帰属者たる出向先においてこれを負担すべきものであるが、身分上の雇用主たる出向元も、当然にこれを免れるものではなく、出向社員の経験、技能等の能力に応じ出向先との出向契約を介して労働環境の安全に配慮すべき義務を負う」となっています。

要約すると、安全配慮の義務は出向先が持ちますが、詳しい措置を設けずに放置した時は、出向させた会社も安全配慮の義務を問われるケースが多いです。出向させた従業員の状況を把握するようにし、問題が発見されたら直ぐ対処をすることがポイントとなります。